40代になると、肌のことが急に気になり始めますよね。妻に何か言われたわけでもないのに、ふと自分の顔が前と違う気がしてくる。
スキンケアでも始めてみるかとドラッグストアに行って、「レチノール」という名前を見かけたことはありませんか。40代のスキンケアでは、まず名前が挙がるくらいには評価されている成分です。
ただ、商品を手に取ると「0.1%」「0.3%」と数字が書かれていて、これが分かりにくい。数字が大きいほうが良さそうに見えますが、そうとは限らないんです。
というのも、レチノールは効きそうなぶん、刺激も出やすい成分だからです。いきなり数字の大きいものを選んで、続けられずに終わる。そうなるともったいない。
私はもぐと申します。化粧品会社で13年ほど、肌のことを研究していました。この%が何を意味しているのか、そもそもレチノールとは何なのか。数字に振り回されずに選べるように、順にお話ししますね。
まず結論:レチノールは40代に頼れる成分。ただし濃度は高いほどいいわけではない
先にお伝えしておくと、レチノールは40代の肌にとって頼りになる成分です。シワ改善の有効成分として国から承認されている実績もあります。使う価値は十分にある、というのが前提の話です。
そのうえで、選び方には注意が必要です。レチノールの%は、効果と刺激が同時に上がっていく目盛りだと思ってください。
数字が上がれば、期待できることも増えるかもしれません。でも同じだけ、肌への負担も増えていきます。片方だけが上がってくれる、という都合のいい話ではないんです。
レチノールは、はたらきが期待される濃度の範囲で、肌への刺激もあわせて出やすいと考えられている成分です。効果だけを取り出して上げる、ということができません。だから、控えめな濃度でも続けられるほうが、結果的に良かったりするわけです。
「高濃度=上位グレード」という受け取り方をすると、せっかくの成分を活かせません。
レチノールとは?ビタミンAの仲間で肌の生まれ変わりに関わる成分
数字の話に入る前に、この成分が何者なのかを押さえておきましょう。
レチノールは、ビタミンAの仲間です。肌の生まれ変わりに関わる成分として、古くから知られています。
この成分が評価されているのには、理由があります。まず、実績が長い。スキンケアの成分として何十年も使われ続けていて、研究の積み重ねがあります。次に、関わる範囲が広い。ハリのなさや、キメの乱れ。40代になって気になり始めるあたりに、幅広く関わると考えられています。
さらに、レチノールは国からシワ改善の有効成分として承認されている成分でもあります。効果をうたえる成分として認められている、というのは、化粧品の成分としては強い立場です。40代のスキンケアで真っ先に名前が挙がるのは、こうした背景があるからですね。
ただし、いいことばかりではありません。はたらきが期待できるぶん、肌への刺激も出やすい成分です。使い始めに赤みやヒリつき、皮むけが起こることがあるのは、この性質によるものです。
男性の場合、髭剃りも少し頭に入れておいてください。毎日刃を当てている顔の下半分は、肌が敏感になりやすい場所です。剃った直後は避けるなど、タイミングだけ気をつけると安心かもしれません。
つまりレチノールは、頼りになるけれど、扱い方で結果が変わる成分。だからこそ、選び方が大事になります。
レチノールの「%」は何を表している?濃度表示の意味
では本題の数字です。
%は、その製品の中にレチノールがどれくらい入っているかの割合を表しています。ここはシンプルですね。
ただ、知っておいてほしいことがあります。%が書かれていない製品も、たくさんあるんです。
化粧品のパッケージの裏には、入っている成分がすべて並べて書かれています。全成分表示と呼ばれるもので、細かい字でずらっと続いているあれですね。これは配合量の多い順に並べる決まりになっています。
だったら順番で分かりそうなものですが、ごく少量の成分になると順番が前後することもあるので、この表示から濃度を読み取るのは、まず無理だと思ってください。
%は、書いてあれば分かる情報であって、必ず分かる情報ではありません。数字が書かれていないから劣っている、ということでもないんです。
純粋レチノールと誘導体の違い|同じ濃度でも意味が変わる
ここが、いちばん誤解されやすいところです。
レチノールと名のつく成分には、いくつか種類があります。大きく分けると、レチノールそのもの(純粋レチノール)と、そこから形を変えた仲間(レチノール誘導体)です。
パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール。全成分表示の中に、こういう名前を見かけたことがあるかもしれません。これらが誘導体です。
この2つは、かなり性格が違います。誘導体は安定していて、肌への刺激も穏やかとされています。そのかわり、肌の上ではたらく形に変わるまでに手間がかかるぶん、はたらき方も穏やかになると考えられています。
どちらが優れている、という話ではありません。しっかり期待したいなら純粋レチノール、まずは肌を慣らしたいなら誘導体。目的によって選び分けるものです。
つまり、同じ「0.1%」でも、純粋レチノールの0.1%と、誘導体の0.1%は、別の話なんですね。
これを知らずに数字だけを横並びで比べると、判断を誤ります。%を見るなら、その前に「何が入っているのか」を見る。順番は、こちらが先です。
レチノールの高濃度は何パーセントから?日本には配合できる量の上限がある
もうひとつ、知っておくと数字の見え方が変わる話を。
日本では、化粧品に配合できるレチノールの量は、100gあたり250,000国際単位(IU)までと定められています。IUは効き目の量を表す単位で、%(重量の割合)へは原料や前提によって換算が変わるため、単純に置き換えることはできません。
大事なのは、国産品はそもそも配合量に上限のある土俵の上にある、ということです。日本製で「高濃度」とうたわれているものも、この範囲の中にあります。
海外製には、桁の違う数字を掲げた製品もあります。ただ、国によって配合の前提となる決まりが異なるので、日本製の「高濃度」と海外製の数字を、同じ物差しで比べることはできません。 数字が大きいから効く、という話ではないんですね。
濃度に上限がある理由はビタミンAだから
では、なぜ配合できる量に決まりがあるのでしょうか。理由は、肌への刺激だけではありません。
さきほどお話ししたとおり、レチノールはビタミンAの仲間です。ビタミンAは体に必要な栄養素ですが、体にたまりやすい性質があり、摂りすぎには注意が必要と一般に言われています。食事やサプリメントからも入ってくるものなので、肌に塗る分も含めて、全体の量として考えられているわけです。
同じ理由から、レチノールは妊娠中・授乳中の摂り方に注意が必要と一般に言われている成分でもあります。自分には関係ないと思うかもしれませんが、家族が使うかもしれませんよね。気になる場合や、その時期に使うかどうかを判断したい場合は、自己判断せず医師に相談してください。ここは私がお答えできる領域ではありません。
濃度の話が肌だけの話ではないと分かると、「数字は大きいほどいい」という発想からは、自然と離れられると思います。
同じレチノールでも「シワ改善」と書ける商品とそうでない商品がある
売り場でこんな経験はありませんか。
どちらもレチノールを前面に出しているのに、片方には「シワを改善する」と書いてあって、もう片方には「うるおいを与えて肌を整える」としか書いていない。同じ成分なのに、なぜ言っていることが違うのか。
これは、商品の種類が違うからです。
さきほど触れたとおり、レチノールはシワ改善の有効成分として承認されています。ただし「シワを改善する」とうたえるのは、医薬部外品として認められた商品にかぎられます。ふつうの化粧品に同じレチノールが入っていても、その言葉は使えない決まりなんですね。
書いてある言葉の差は、中身の優劣ではありません。商品の分類の差です。この違いは知っておくと選び方が変わるので、化粧品と医薬部外品は何が違うのかにまとめてあります。
レチノール化粧品の選び方|初心者は濃度より成分名を見る
最後に、売り場で使える見方をまとめます。
まず、何が入っているかを見る。 純粋レチノールか、誘導体か。%を見比べるのは、そのあとの話です。名前が分からなければ、パッケージの成分名をそのまま検索するだけでも十分ですよ。
%が書かれていなくても、気にしない。 表示の義務があるわけではないので、書かれていない製品はたくさんあります。数字がないから劣る、ということではありません。
低いものから、自分の肌で様子を見る。 これがいちばん確実です。私からは「何%がいい」という数字は申し上げません。肌の状態も感じ方も人それぞれで、一律に言えるものではないからです。控えめなところから始めて、自分の肌に聞く。遠回りに見えて、これがいちばん早い道です。
赤みやヒリつきが出たら、続けない。 レチノールでは、皮むけや赤みといった反応が起こることがあります。起こりうる現象として知られていますが、我慢して続けるものではありません。髭剃りの直後は肌が敏感になりやすいので、そのタイミングは避けたほうが無難です。気になる症状が出たら使用を控えて、心配なときは皮膚科で相談してください。
私自身、商品を見てきた立場として、数字の大きさで良し悪しを判断しないようにしてきました。ナイアシンアミドのような他の成分でも同じですが、大事なのは「その数字が何を意味しているか」であって、数字そのものではないんです。
まとめ
まとめますね。
- レチノールはビタミンAの仲間で、シワ改善の有効成分として承認されている実績のある成分
- ただし、はたらきが期待できるぶん刺激も出やすい。だから選び方で結果が変わる
- %は効き目のランクではなく、効果と刺激が同時に上がる目盛り
- 純粋レチノールか誘導体かで、同じ%でも意味が変わる。まず「何が入っているか」を見る
- 日本では配合できる量に上限があり、100gあたり250,000IUまでと定められている
- 「シワを改善する」と書けるかどうかは、中身の優劣ではなく商品の分類の差
数字が大きいほうが良さそう。その感覚は自然なものですが、レチノールに関しては、そこだけで決めないほうがうまくいきます。
40代のスキンケアは、強さより続けられるかどうか。次に売り場に立ったときは、%より先に成分名を見てみてください。それだけで、選び方がずいぶん変わるはずです。
化粧品会社で約13年、保湿・バリア機能・美白・シワの研究に携わる。ヒト肌での水分量や刺激反応の測定などを担当。40代の当事者として、自分の肌で確かめながら「断言せず、考え方を届ける」スタンスで発信しています。

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