ドラッグストアで、似たような化粧水が2つ。片方には「薬用」と書いてあって、もう片方にはない。値段も少し違う。どっちを買えばいいのか分からなくて、手が止まったこと、ありませんか。
なんとなく「薬用のほうが効きそう」と思って、そっちを選んだ。そんな覚えのある人も多いと思います。
先に、いちばん大事なことを言ってしまいます。「薬用(医薬部外品)」のほうが必ず良い、というわけではありません。目的が違うだけなんです。
私はもぐと申します。化粧品会社で13年ほど、作る側にいました。その経験から、この「薬用」と「ふつうの化粧品」の違いを、売り場で判断できる形で整理してお伝えします。
まず結論:「薬用」=必ず効く・上位、ではありません
「薬用」や「医薬部外品」と書いてあると、なんだか格上に見えませんか。効き目が保証されているような気もします。
でも、そうではないんです。これは優劣の話ではなく、目的の違いの話です。
ざっくり言うと、こうです。
- 化粧品:肌を清潔に保つ、整える、うるおすことが目的
- 医薬部外品(薬用):それに加えて、国が認めた特定の目的(シワを改善する、メラニンの生成を抑えてシミ・そばかすを防ぐ等)に向けた成分が入っている
だから「どっちが上」ではなく、「自分は今、何をしたいのか」で選ぶもの。ここが分かると、売り場で迷わなくなります。
化粧品とは、どういうものか
化粧品は、肌を清潔に保ったり、うるおいを与えて整えたりすることを目的にしたものです。私たちが毎日使う化粧水も乳液も、多くはこの化粧品にあたります。
化粧品には、ひとつ決まりがあります。「これを使えばシワが改善します」といった、強い効能をうたってはいけない、という決まりです。
ただ、これを「効かないから言えない」と受け取らないでください。「制度上、そういう強い言い方はしない分類だから」うたっていないだけです。中身が優れた化粧品は、いくらでもあります。言葉が控えめなだけで、実力とは別の話なんです。
医薬部外品(薬用)とは、どういうものか
医薬部外品は、「薬用」と書かれることも多いものです。じつはこの「薬用」という言葉、医薬部外品にしか使えない呼び名だという決まりがあります。だから「薬用」と書いてあれば、それは医薬部外品なんだ、と考えて大丈夫です。私も、これを知るまでは意味が分かっていませんでした。
位置づけとしては、化粧品と医薬品の、ちょうど中間くらいと考えてもらうと近いです。
こちらには、国が「この目的にはこの成分が役立つ」と認めた成分(有効成分)が、決められた量の範囲で入っています。だから、その認められた範囲にかぎって、決まった効能をパッケージにうたうことができます。
たとえば「シワを改善する」「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ(=美白)」といった言葉です。こうした言葉が書けるのは、国の承認を受けた医薬部外品だから、という決まりになっています。
言いかえると、「薬用」という表示は、効き目の強さのランクではありません。「決められた目的の成分が、決められた形で入っていますよ」という目印なんですね。
だから、同じ「配合」でも意味が変わります
同じ成分名が書いてあっても、その言葉の重さは、化粧品か医薬部外品かで変わります。表示を読むうえで、ここがいちばん大事なところです。
医薬部外品で、その成分が「有効成分」として認められて入っている場合は、決まった効能をうたえます。一方、ふつうの化粧品に同じ成分名が「配合」と書いてあるときは、「入っていますよ」という事実を伝えているだけで、効能を約束するものではありません。
たとえばナイアシンアミドのような成分でも、この「配合」の意味は商品の種類で変わります。塗るコラーゲンのように、そもそも配合の狙いが保湿寄りの成分もあります。だから「配合と書いてある=効く」と早合点しないことが、賢い選び方の第一歩です。
「薬用のほうが効く」とは限らない理由
では、なぜ「薬用=効く」と言い切れないのか。理由は3つあります。
ひとつめは、目的が違うこと。医薬部外品は「決められた目的」に向けたものです。あなたのしたいことが、その目的と違えば、薬用である意味はうすくなります。
ふたつめは、化粧品にも優れたものが多いこと。うたえる言葉が控えめなだけで、使い心地や保湿の実力が高いものはたくさんあります。見た目の言葉だけで見劣りさせるのは、もったいない話です。
みっつめは、肌との相性が人それぞれなこと。どんなに承認された成分でも、自分の肌に合わなければ続きません。「薬用だから」で選んでヒリついてしまえば、元も子もないですよね。
つまり、「薬用かどうか」は、選ぶときのひとつの情報にすぎません。それだけで上下を決めるものではないんです。
【実用】売り場・通販で、表示のどこを見ればいいか
最後に、次の買い物ですぐ使える見方をまとめます。難しく考えなくて大丈夫です。
まず、自分の目的をひとつ決める。「テカリを抑えたい」「乾燥をどうにかしたい」「シミを防ぎたい」。これが出発点です。目的がないまま棚の前に立つから、迷うんですね。
次に、その目的が“決まった効能”にあたるか考える。「シミを防ぎたい」「シワを改善したい」のように、はっきりした目的なら、医薬部外品(薬用)で、その効能がうたわれているものを候補にするといいです。「とにかく乾燥を防いで肌を整えたい」なら、化粧品でも十分に選べます。
「そこまではっきりした悩みはない。なんとなく肌を整えたいだけ」。そういう人も多いと思います。その場合は、無理に薬用を選ばなくて大丈夫です。まずは化粧品で、使い心地がよくて毎日続けられそうなものを選ぶ。それが、いちばん失敗の少ない入り口です。悩みがはっきりしてきたら、そのとき薬用を検討すればいい話なので。
そして、パッケージの言葉と値段に振り回されない。「薬用」「高濃度」「高価格」は、良さの保証ではありません。目印のひとつとして見て、最後は自分の目的と肌で決める。これだけで、買い物の精度がぐっと上がります。
私自身は、「どういう効果がほしいか」で選ぶようにしています。そのうえで、同じ効果を狙うなら薬用を選ぶことが多いです。たとえばハンドクリーム。私はカサカサをどうにかしたいだけで、スベスベを目指しているわけではないので、その目的にまっすぐな薬用を手に取ります。「薬用が格上だから」ではなく、「自分の目的に合うから」で選ぶ。順番が逆にならなければ、それで大丈夫です。
まとめ
長くなったので、最後に整理します。
- 「薬用(医薬部外品)」=必ず効く・上位、ではない。化粧品との違いは“目的”
- 化粧品は「肌を整え、保つ」もの。強い効能をうたわないだけで、実力とは別
- 医薬部外品は、国が認めた成分が決まった範囲で入り、決まった効能をうたえるもの(「薬用」はこの目印)
- だから同じ成分名でも「配合」の意味は種類で変わる
- 選ぶときは、①自分の目的を決める ②それが決まった効能にあたるか考える ③見た目の言葉と値段で選ばない
「薬用のほうが良さそう」。その感覚は自然なものですが、そこだけで決めなくて大丈夫です。次に棚の前に立ったときは、まず「自分は今これがしたい」から考えてみてください。それだけで、選ぶのがずいぶんラクになるはずです。
化粧品会社で約13年、保湿・バリア機能・美白・シワの研究に携わる。ヒト肌での水分量や刺激反応の測定などを担当。40代の当事者として、自分の肌で確かめながら「断言せず、考え方を届ける」スタンスで発信しています。

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